自分の「こころ」がコントロールできたらどんなにいいだろう。
そう思う方は多いと思います。人生は思い通りにいくことばかりではありません。
病気や事故、災害、リストラ、死別、離婚、失恋など予期せぬ不幸は突然訪れ感情を大きく揺さぶり気分を落ち込ませ、悲しみに心が支配されることがあります。
またストレス社会とも称される現代では、過労や職場での人間関係など日々のストレスが少しずつ積もり、ある日突然うつ病などの気分障害となる場合もあります。
厚生労働省の調査によると、うつ病や双極性障害などの気分(感情)障害で医療機関を受診している患者数は2017年の時点で127.6万人と報告されています。100人に約6人が生涯のうちにうつ病を経験しているという調査結果もあります。近年では「コロナ鬱」が社会問題となりましたが、心の病の患者数は年々増加していると推測されています。
気分の落ち込みや悲しみが一切起きないようにすることは生きている限り不可能な事だと思います。ただ、悲しみを不必要に長引かせ、継続させると一定期間の気持ちの落ち込みだけでなく、うつ病などの病気を発症させてしまう事もあります。
私たちの「こころ」も結局は脳の神経伝達物質などに支配されており、うつ病も脳などの機能に変調が起こって発症するとも言われています。うつ病になってしまうメカニズムを科学的に知ることは、そうならない為の対策をするために必要な事と言えるでしょう。今回はなぜうつ病などの気分障害になってしまうのかを、簡単に説明したいと思います。
私たちの感情は、脳の神経伝達物質などによりコントロールされています。「セロトニン」という物質は心を穏やかにするなど精神を安定させる役割をしており、脳内の「幸福物質」と称されることもあります。
セロトニンは快楽・意欲に関係しているドパミンや、恐怖や驚き・不安の感情に関係しているノルアドレナリンを制御する事により精神を安定させています。
辛い体験や悲しい出来事を過度に経験したり、環境の変化などでストレスがかかると幸福物質「セロトニン」が低下すると言われています。するとドパミンやノルアドレナリンなどもコントロールできなくなり、攻撃性が高まったり不安や抑うつした気持ちに支配されてしまい、果てはパニック障害やうつ病などを引き起こす原因となります。
また、セロトニンは安眠のためのホルモン「メラトニン」の原材料となります。セロトニン低下はメラトニン低下へとつながり、睡眠の質の低下や不眠症へとつながります。不眠症はうつ病を悪化させてしまうという臨床試験のデータも存在します。不眠とうつの悪循環へと陥ってしまう場合もあるのです。
上記の機序でうつ病になるという学説が有力なことから、セロトニンやノルアドレナリンなどの体内での利用効率を高める医薬品がうつ病治療として活用されています。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)などの医薬品はいわゆる抗うつ薬と呼ばれるものですが、うつ病と診断されてはじめて医師より処方されるものであり、うつ病になるまで心を壊してしまうと長い期間をかけて治療などを行いこころを回復させる必要があります。
やはりうつ病と診断される前段階で、どうしたらセロトニンの低下を起こさないように出来るのかを知り、心の健康のために対策することが大変重要となってきます。
次回はうつ病を予防するための具体的な栄養療法をご紹介したいと思います。
蛇足ですが、うつ病にならないための栄養療法を知る事も重要ですが、自分のこころをどうしたら守る事が出来るのかを意識することも必要だと私は考えます。私の場合は人間関係は必要不可欠な事しか我慢しない事にしています。例えば職場での人間関係がストレスの場合、メリット・デメリットを天秤にかけて生活費のために我慢するという判断も必要となるでしょう。しかし人生において全てを我慢する必要もなく、ある程度人間関係や身の置き場をコントロールすることは出来ます。うつ病になる人は無理してまで知人・友人関係なども人付き合いをする人が多く、知らず知らずのうちに心が疲弊してしまう人が多いといいます。自分が居心地が悪い環境や人にではなく、自分を気にかけてくれる人や居場所を大事にし愛情を注いだほうが心豊かに過ごせます。
また、人生において様々な困難は突然降りかかり、自分自身でコントロール出来ない事も多々あります。そんな時ほど自分自身に集中してみると嫌な事も忘れる気がします。起こってしまった困難や他人は変えることが出来ないかもしれませんが、自分は違いますのでバランスを取っているのかもしれません。私の場合仕事や興味関心がある事の勉強をすることで心が癒されますが、皆さんの心の健康法は何でしょうか?自分に合った方法で心の健康を守りたいですね。