こんにちは!薬剤師の平井です。

今回は愛飲家も多い、身近なあの飲料について取り上げてみようと思います。

日本でも人気のエナジードリンク、「疲労回復」「睡眠不足なのでスカッとしたい」「気分を上げたい」このような目的で使用する人が数多くいます。

ネットショップamaz○○…(笑)でも何かを授ける!とうたっている某エナジードリンク大量買いセットもまとめ買い推奨商品として良くセールになっていて、若い世代を中心に支持されているようですね。

しかしながらエナジードリンクはカフェインなどの刺激物も多いことから「健康に悪い!」と警告する医師などの専門家もいます。さらにその危険性を指摘する声さえあります。

エナジードリンクが本当に危険かどうか、気になるところですよね…

 エナジードリンクは日本だけでなく世界中の若者に人気です。もちろん米国でもしかりです。米国はエナジードリンクの世界最大の市場なのですが、エナジードリンクの過剰摂取をおこす人が多くいることが度々問題視されてきました。そのような背景から米国ではある研究が行われました。

世界138ヶ国から患者を集める米国の最先端病院の一つであるメイヨークリニックが、エナジードリンク摂取におけるある危険性の調査を行ったのです。

 

 メイヨークリニックは米国病院ランキング1位の常連で、2兆円を超える年間売上をあげるなど医療界の巨人として知られています。医療の質の高さは言うに及びませんが、米国の医療AI(人工知能)開発の最前線として機能するとても興味深い病院です。

近年AIの力で医療の質を向上させようとする動きが世界的に活発となっています。例えば人間(医師などの医療従事者)ではこれまで発見できなかった身体の異変を、AIの力を使えば早期に検知出来る可能性もあるからです。

メイヨークリニックは米国の医療AI開発に関わる病院のリーダー的存在で、世界中から厳選された患者データを持ち最先端医療の導入に積極的なこの病院には、マイクロソフトやアマゾンなどの有名企業のほか、AIベンチャー企業もこぞって共同開発をもちかけ、様々なAI医療機器などを世に送り出しており、他の追随を許さない経営戦略は度々話題を集めています。

メイヨークリニックは「AIによる予防医療の強化」を目指しており、私も注目しています。

グーグル社と共同で「将来どんな病気にかかるのか」を検知するシステムの開発等も行っているのです。

例えば、患者のデータからAIが「3年後に心不全で突然死を引き起こす」といった兆候を検知し、予防策を含めた医療を提供しようとするものです。

腎臓についての栄養・健康情報コラム前半後半でもお伝えしましたが、腎臓病のように初期症状に乏しいことも多く、気付いた時には手遅れ状態を起こしかねない病気にとっては、無症状の超初期段階から将来のリスクを認識でき、治療や予防行動が可能となる事は本当に大きな救いとなる技術だと思います。

 

話が脱線してしまいましたが、このように米国の最先端医療の要として機能するメイヨークリニックが、エナジードリンクが人間の生命の維持に欠かせない重要な臓器、「心臓」に与える影響の調査を行ったのです。

 結論から言うと、研究者らは健康な心臓であればエナジードリンクに入っている化学物質も、「適度な摂取」であれば問題なく処理できると発表しました。

しかし、遺伝性の心疾患を持つ人々がエナジードリンクを大量に摂取すると、「不整脈」を引き起こし命に係わるリスクがあると警告しました。人間の身体は本当に個人差があり、生まれつき心臓が弱い人がいるのも事実ですので注意が必要です。

研究についてごく簡単にお伝えすると、メイヨークリニックで突然の心停止から生還した144人の患者を調査した結果、5%の7人が心臓発作の直前に1杯以上のエナジードリンクを飲んでいたことが判明したのです。

 メイヨークリニックの心臓専門医は、

睡眠不足が続き、エナジードリンクの摂取が1回、2回、3回と続くかもしれません。すると心疾患の人には心臓にダメージを与えてしまいます。エナジードリンクは適度な摂取を心掛けて!」と警告しています。

 この結果を踏まえると「自分は心臓に特に問題がないからエナジードリンクを日常的に摂取しても良いかな」と思う人もいるかもしれません。ではなぜ「健康に悪い!」とも言われているのでしょうか。

 実はメイヨークリニックの栄養士もエナジードリンクは健康のためには控えるように呼び掛けています。

 冒頭にも記載した通り、エナジードリンクにはカフェインが大量に含まれ、カフェインには覚醒作用があることから「疲労を改善したい」「睡眠不足」「精神的な落ち込みを改善したい」という目的で摂取している人が数多くいます。

 しかしながら恐ろしいことにそれは逆効果になることもあるのです!!

メイヨークリニックの栄養士はカフェインには神経過敏、不眠、イライラ、パニック発作などの悪影響も及ぼす可能性もあり、不安障害を患っている人は、こうした影響を受けやすいことを警告しています。 

 気分を上げるどころか精神状態を益々悪化させる可能性があるなんて…と驚いた方もいるかもしれません。

 しかしうつ病や不眠症を患っている人がカフェインを摂取すると症状を悪化させることは精神医療の領域では有名な話で、病気でなくても性格的に神経質な人はカフェインを摂取しない方が良い、と注意喚起をする精神科医さえいます。

 

さらに言うと、エナジードリンクには「糖分」が含まれている商品が多いです。疲れた時に糖質を摂取し、血糖値を上げると一時的に疲労が軽減するので、そのような設計になっている商品が多くあるのです。

 しかしこれにも本当に大きな落とし穴が潜んでいます!

疲労時の糖質摂取は確かに一時は効果がありますが、

過去のメンタル関連の栄養・健康コラム前半後半でもお伝えしましたが、摂取の仕方によっては糖質は精神状態に大きく影響を与えることが分かっています。

例えば空腹時に精製された砂糖を含む飲料などを摂取すると血糖値が上昇しやすくなります。急上昇した血糖値は急に下がる傾向にあり低血糖を引き起こします。低血糖状態は疲労感や倦怠感を増大させるなど、逆に体が疲れやすくなるばかりか精神に悪影響がある事が分かっており、苛立ちや不安に加え抑うつ的な状態となります。さらに深刻なのが、※血糖値の乱高下を繰り返すと情緒不安定になり凶暴性が増すなど、負の感情を加速させます。

(※詳しい解説がお知りになりたい方は「こころに良い栄養素を知ることで人生も変わります」をお読みください。)

 つまりはエナジードリンクは疲労や気分の落ち込みを「カフェイン」や「糖分」で一時的に緩和させようとする作戦の製品ですが、中長期的にみるとそれには逆効果になる可能性もある製品だという事も決して忘れてはならないのです。

 

さらに恐ろしいのはカフェインには依存性があり、カフェインの摂取で眠気の軽減や精神の高揚を得ることを繰り返すと、次第に必要となるカフェインの量が増えてしまい、カフェインを摂取していないと倦怠感が強く感じられるなどの、依存状態が起きてしまいます。

つまりは状態を悪化させてしまう可能性もあるのに一時的な快楽のためにやめられない、という、中毒状態に陥るのです…

 

因みにエナジードリンクは米国で販売されているのものでは1本当たり100300㎎とカフェインが大量に入っている製品が多く、商品によっては1本以上飲むと米国食品医薬品局(FDA)が推奨する成人が1日当たり摂取できるカフェイン量400㎎以下という基準を越してしまいます。

因みに日本で販売されているエナジードリンクや栄養ドリンクにも1本で50㎎~150㎎とカフェインが多量に入っています。日本でもカフェインの安全基準は成人で400㎎以下、妊娠を計画している場合ならより厳しく300㎎以下を目安にしており、カフェイン含有のエナジードリンクや栄養ドリンクを1日何本も飲んだり、コーラやコーヒーなど他のカフェイン含有飲料と一緒に飲んでしまうと簡単に摂りすぎの水準になってしまうリスクがあります。

 

上記のような理由で「エナジードリンクは危険!」と警鐘を鳴らす医師や栄養士などの専門家もいるのです。

 このカフェインで元気になった後に虚脱感を覚える状態を「元気の前借り」と表現されることもあるのですが、「前借り」でなく「継続的に元気に」という根本解決を求めるには、やはり生活習慣を見直したり、摂取する栄養素を考え直す必要があります。

 長くなりましたので、栄養に関しては次回お伝えしようと思います!